結局、車はカギを開けるとアラームが鳴ってしまう問題は直らなかった。
一刻も早く、ゲインダーの車屋に再び見てもらう必要があった。
ちょうどゲインダーのオレンジ取りの仕事に一時的に行っていたので、仕事帰りに寄るつもりで仕事に車を持って行った。
仕事が終わって車屋に向かっている途中、パンと大きな音がしたので路肩に止めて確認したら左後ろのタイヤがパンクしていた....。
特に何を踏んだわけでも無いのに...。
マジで何なの...。
修理から帰ってきて一週間。
しかも不備があるから再び車屋に持っていこうと走らせている途中に...。
マジで次から次へと...。
しかも、車の後ろのスペアタイヤをつける部品が壊れていたのもあって、スペアを積んでいなかった...。
家に置きっぱなしだった。
時間的にも日没が迫っていた。
今からマンダベラまで取りに帰るのは良くない。
この日は車を路肩に止めて、ジュンペイ君の車に乗せてもらって帰った。
明日仕事を休んで、ジュンペイ君の車にスペアを乗せてもらってまた来るしかない...。
翌日、仕事を休んでタイヤと共に路肩に降ろしてもらう。
メインロードからそれた、めちゃくちゃ田舎の道...。
農場関係者しか通らない。
自分でタイヤ交換しようとするも、ネジが硬すぎて外れない...。
しかもネジのうち一つはネジ山が変形していて工具がはまらない...。
すぐに諦めて、ロードサービスを呼ぶことにした。
電話をするが、もちろんめちゃくちゃ英語...。
パンクしたこと、ゲインダーの近くにいること、スペアを持っていることは伝えられたが、正確な位置情報を伝えるのに苦労する。
一応この道には名前があるみたいで、伝わったのか伝わってないのかよく分からないけど、1時間後に行きますと言われる。
ひたすら待っていると、放牧された大量の牛が歩いてくる...。
何なの...。
1時間後に着くと言われていたのに、1時間後に修理屋の方から電話がかかってくる。
あと45分で着くよと言われる。
2時間じゃん、倍じゃんと思いつつ...。
その人にメッセージでGPS情報を送って、正確な場所を伝えられた。
電話してから2時間後、ロードサービス到着。
速攻で交換してくれた。
ロードサービスに加入していて良かった...。
ケチって入っていなかったらどうしていいか分からなかった...。
そして携帯の電波がギリギリ入る場所でパンクしたのが不幸中の幸いだった。
1km手前だったら電波が無かった...。
前オーナーからは、パンクした左後ろのタイヤだけは途中で中古で買ったものだと言われていた。
他3本とは違うらしい。
それとスペアタイヤはだいぶ消耗されているタイヤだから危ないとは言われていた。
なるべく早く新しいタイヤを買う必要があった。
ゲインダーのタイヤ屋に行くが、在庫が無いと言われる。
こんな田舎でさすがに無いか...。
マンダベラにも無さそうな気がする...。
ひとまずゲインダーの修理屋に持って行って、アラームを直してもらう。
ただオーナーが不在で帰ってくるのが3時間後だと言われる...。
マンダベラに一度戻るにもスペアタイヤだと不安だし、ガソリン代も高い...。
3時間車の中で寝て待つ...。
結局4時間後オーナーが帰ってきて車を見てもらう。
アラーム、パワーウインドウの話をするが、結局は「そこは俺たちは触ってないから知らない」という話だった...。
パンクしてまでゲインダーに来た意味...。
4時間も待ったのに...。
それと、運転していると若干ガソリン臭いというのもあったので見てもらうが、オーナーいわく給油口のゴムが古くてそこから臭いが漏れているという話だった。
走行には問題ないと。
パーツを取り寄せるのにブリスベンから一週間かかると言われる。
料金は15ドルで安かったけど、わざわざここで直すのも大変なので断る。
それならマンダベラで直した方がいいし。
結局なんの解決にもならなかった。
マンダベラに戻ってタイヤを探す。
パーツ屋に行くと、別でタイヤ屋があると紹介される。
マンダベラの来たことが無かったエリアにタイヤ屋はあった。
話をすると在庫があった。良かった。
1本新品で160ドル。
仕方ない...。
大都市ならもう少し安いんだろうけど....。
こんな田舎に在庫があっただけマシ。
数日後、調子が良かったパワーウインドウが開いたまま閉まらなくなる....。
マジで何なの...。
せめて閉まっている時に壊れてほしかった...。
アラームもパワーウインドウも直さなきゃなのでマンダベラの修理屋に持っていくと、混み合っていて、予約しても来週になると言われる...。
1週間、窓開きっぱなしで過ごす...。
1週間後、修理に出す。
パワーウインドウはモーターが古くて壊れているとのことだった。
アラームはカギの自動開閉が壊れているのが原因らしい。
ゲインダーの修理屋のせいでは無かった...。
パワーウインドウはモーターの部品を取り寄せるのに1週間かかると言われる。
カギは、ひとまずアラームだけ止めてもらって、新しいカギの見積もりだけお願いする。
アラームが鳴らなければひとまずいいし...。
ある休日の夜、街のラグビー場でマンダベラ対ゲインダーのラグビーの試合があった。
街がチームカラーで賑わっていたから試合のことは知っていた。こんなことは初めてだった。
歓声が凄くて家まで聞こえてくるから、行ってみたらちょうど試合が終わっていた。
マンダベラは負けたらしい。
その後、家でキャラバンパークの日本人たちで呑んでいたら、サプライズ的なやつで誕生日ケーキをもらった。
マミコさんがしてくれた。
この2日前が誕生日だった。嬉しかった。
1年前の誕生日はアルメニアにいた。
あの時はタカとトモがお祝いしてくれた。
あれから1年かぁと。
俺もついに20代最後の1年になった。
こんなところでこんなことしているから、何の実感も無ければ、何の感慨も焦りも無いけど...。
その数日後、マミコさんはシェアハウスへと引っ越していった。
そっちの方が安いし。個人部屋だし。
Wi-Fiが無いから俺はキャラバンパークの方がいいけども。
結局1か月ぐらい一緒に暮らした。
その数日後、タカがマンダベラに来た。
1年ぶりの再会。
今から1年2カ月前、キルギスの首都ビシュケクの宿で知り合った。
1週間ぐらい離れたけど、その後ウズベキスタンの首都タシケントで合流した。
そこから2か月間、ウズベキスタン、カザフスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア、トルコと一緒に回った。
ホントにあの時は一日中一緒にいた。
たくさん色々なことがあった。
トルコのイスタンブールの宿の前で別れた。
俺はその後、飛行機でスペインに。
彼はインドに向かった。
ちょこちょこは連絡を取っていた。
その後、インドからオーストラリアに行って働いているという話も聞いていた。
俺がウクライナでオーストラリアのことを調べていた時は、彼はガトンでブロッコリーの収穫をしていて、色々と情報をもらった。
その後、俺がオーストリアに来る前に彼は日本に帰国した。
どっかでまた会えるとは思っていた。
日本なのかな、数年後かなと。
ただ、数カ月前に連絡が来て、8月から再びオーストリアに行こうと思うと連絡が来た。
どっかでタイミングが合えば合流するか、違う街で一緒に働くかみたいな話はしていた。
ただ俺の今の仕事が順調なので、俺はマンダベラからしばらく離れない。
それと彼は当初行っていたガトンに戻るつもりでいたけど、ここ数カ月のガトンの噂があまりにも悪すぎた。
天候不良で仕事が無い、仕事を探す人があふれているという話をよく聞いた。
他にアテも無いから、じゃあマンダベラに行くと連絡が来た。
マンダベラもこれからブルーベリーシーズン。
なんとか仕事はあるだろうと。
そこから色々と連絡を取った。
俺的にも、マミコさんが去ったので同居人が決まってありがたい。
タカが着いた日の夜も、そこから数日間も、ここ1年にあったこととマンダベラのことを夜遅くまで話しながら呑んだ。
ブルーベリーは天候不良で1か月以上、増員が遅れていた。
マンダベラも仕事が無く、増員待ちの人がたくさんいた。
タカは着いて3日目くらいからキャラバンパークのトイレ掃除の仕事をして、その数日後からまだ残っていたマルコットの仕事が決まった。
俺はマルコットの収穫に1週間だけ戻り、元の農場が再び再開したので戻った。
再開すると、前に一緒にマルコットで働いていたネパール人二人がうちの農場に配属になった。
一人はよくコンビを組んでいたデーヴだった。
バスが二人を毎日迎えに行けと言うから、彼らの送り迎えも仕事になった。
交渉して一人一日5ドルもらうことになった。
ガソリン代ぐらいにはなる。
この農場に移動し、時給制になってから2か月近くが経った。
ひたすら毎日丸太を立てた。
給料は完璧に安定した。
車の修理費もこの2ヵ月でほぼ回収出来た。
デカい蛇を捕まえて喜ぶリッチー。
大量に届く新しい丸太。
ある日、「お前はマニュアルは運転出来るか？」と聞かれたので出来ると答えたら、「トラクターは？」と聞かれたので、たぶん問題ないと答える。
そしたらその場で、「よし説明する。」と言われて操作方法を教わる。
毎日横で見ていたから何となくは分かっていたし。
この日から仕事の中にトラクターの運転も入った。
まさか人生でトラクターを運転する時が来るとは思ってなかった。
しかもオーストリアでこんなデカいトラクターを。
デカい木材を運び、配置する仕事。
結局並べるのは俺とネパール人だから、俺は仕事が増えただけ。
ネパール人は運んでいる間は暇だし。
小さいトラクター。
ある程度出来ているブロックの方の、ワイヤーを張る仕事。
農場用の車。ワイヤー張ったり整えたりする仕事。
バギー。空気入れをけん引してる。
この頃からトラクターが運転出来るようになったということもあって、丸太立てはリッチーと他のネパール人の仕事になり、俺とデーヴでワイヤー張りの仕事が多くなった。
マルコットの時も相方だったけど、あの時は仕事は別々だったから話すことも大して無かった。
ただワイヤー張りになってからお互いの主張とか、手際とかでイライラすることが多かった...。
些細なことだけど。
言語も育ちもまったく違う人と1日中ペアで働くのは疲れることも多かった。
本当に毎日イライラすることが多かった。
休みの日に外で集まって呑んでいたら、隣で中国、香港、台湾の人が集まって麻雀をしていたので俺とタカで教わる。
手札は日本より3枚多い17枚。
字牌が1種類多くて、それを引くと、それを捨ててもう一枚引けるルール。
なので全体で牌は4枚多く、自分の山札は18枚になる。
聞いていたように役は無く、揃えれば上がれる。
ポンとチー、カンは出来る。
中国と台湾で若干のルールの違いがあるらしい。
日本で普段使っている麻雀用語、牌の読み方はほとんど通じた。
夢が叶った。面白かった。
8月下旬、マミコさんの友達のアキちゃんがマンダベラにやってきた。
同い年、セカンドビザ目的。
日本のカレーをご馳走になる。
彼女は個人部屋だから、夜はよくウチに遊びに来ていた。
ある日の朝、マンダベラの廃品場みたいな場所へ、ファーマーとデーヴとワイヤーの買い出し。
古い貨物列車の中にワイヤーは保管されていた。
8月31日。
住んでいるキャラバンパークで「さよならオレンジパーティー」があった。
どこのファームでもマルコットが終わり始めていた。
また来年の3月まで無い。
この日はキャラバンパークでご飯とソフトドリンクが無料で振舞われた。
こんなこと初めて。
ちゃんとした、たくさんの肉。
こんなまともな食事、オーストリアに来て初めて。
だんだんマンダベラから人が少なくなり始めた。
キャラバンパークからもトンガ人達の数が減り始めた。
国に帰り始めているらしい。
あとはブルーベリーしかないし。
最近はスーパーに買い物に行くと、毎回3人ぐらい知り合いに会い、立ち話をするようになった。
ネパール人、韓国人、インドネシア人、マレーシア人。
最近の仕事がどんな感じかとか。
なぜオーストリアのこんな田舎町で知り合いがこんなに出来ているのかと...。
マンダベラに来て半年が経った。
2年目滞在可能な、セカンドビザ取得条件が整った。
申請に必要なファーム労働日数88日は大幅に超えていたけど、5000ドルの残高証明に時間がかかった。
申請時に、取得するのに色々面倒なことが起きたりする人もいるみたいだったけど、必要書類と給与明細、所得証明を添付して申請したら、2秒で返信が来た。
取得出来た。
1年目のビザの時と一緒。
これだけは運が良い。
これでひとまずは再来年の2月まで滞在可能。
そんなにいたくないけど。
ある日、キャラバンパークから紹介できる仕事があるとみんなに通達があり、タカもアキちゃんもみんなそこへ仕事に行くことになった。
時給制のオレンジの木の手入れらしい。
しばらく続くそうで、これでタカもマンダベラに確実な長期滞在が決まった。
休日、運動場でみんな集まってサッカーをしてる。
トンガ人、スーダン人、インドネシア人、韓国人、日本人。
半年前来た時はゲンちゃんから日本人はこの街にいないと聞かされて来た。
この街ではゲンちゃんだけしか知らなかった。
季節は確実に夏になってきていた。
日中働いている時は、汗をかくようになり、暑いと感じるようになった。
朝晩もそこまで冷え込まない。
嫌だ....。しんどくなってきた。
夏は暑いからファームの仕事はしたくない、他の街に行くぞと思っていたけど、仕事はちゃんとあるし、たいした不満も無いし、お金はちゃんと溜まる...。
もうしばらくマンダベラ生活は続きそう。
車の運転席の窓の修理の部品待ち以外は、たいした問題も無い。
やっと、やっと落ち着いて、最近は順調な出稼ぎ生活みたいな毎日。
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