1月20日、ロンドンに着いた翌日。
さっそく面接に行く。
2社面接の約束をもらっていた。
1つめはシドニー時代の会社の社長から教えてもらって、直接会社のHPから連絡した会社。
返信をもらって日本で1度オンラインで面接はしてある。
今日は直接会っての面接だった。
会社はギリギリロンドンと言えるぐらい北部の郊外にあった。
もう少し北に行けばロンドンでは無くなる。
宿から路線バスを2回も乗り継いで、2時間近くかかって到着した。
オンラインで面接していただいた4人、社長さんと他に3人の社員さんと面接だった。
オンラインの時でも話したが直接もう1度お話した。
俺としては、シドニーで同じ仕事をしていたのでノウハウはあること。
もともとバックパッカーだから色々な景色や街が見たいからこの仕事がしたいこと。
なので出来れば毎日市内中心部に配達に行くよりは郊外に行きたいこと。
会社側からは出来れば採用したいと言っていただく。
理由は、現在日本人ドライバーが1人もいないこと。
日本人客を中心としたホームデリバリーを伸ばしていきたいので、それには日本人ドライバーはぴったりだということ。
それと現在は自社ドライバーでは無く他社に委託している郊外路線を復活させたいから、そのドライバー要員としていいということ。
例えば車で2時間ほどの場所にトヨタの工場があるからそのエリアに行くとからしい。
ただ現在は具体的なプランや車が無いので採用後徐々に考えていきたいとのことだった。
とても嬉しいお話だった。
ただ免許証をすぐに申請しても手元に届くのに6週間ぐらいはかかる。
すぐに働けるか伺うと、免許証が無い間はトレーニングや他の仕事を用意するから週明けから働いてもらって構わないと言っていただく。
給料は具体的にどう考えているかと聞かれたので、シドニーでもらっていた金額を伝えて、同じぐらい貰えたら嬉しいですと伝えた。
ただこれは正直無理だとは思っていた。
シドニーでの給料はオーストラリアでも良い方だった。
イギリスのワーホリの給料の平均はずっと下がる。
求人サイトの募集要項を眺めていても、オーストラリアの3分の2以下になる。
それと正直にこのあともう1社と面接があって比較したうえで考えたいと伝える。
了承していただき、今日中に話し合って具体的な待遇を決めてメールで送りますと言ってもらう。
その足でもう1社に向かう。
ここはロンドンでも日本人の多いエリア、西部にあった。
いくつかの会社が入っている倉庫の1室にあった。
社員数数名の小さな会社で、神戸牛の航空機での輸入と卸だった。
車も2台で配達しているらしい。
配達先のほとんどが市内中心の、星の付いた高級レストランであること。
配達車で通勤していいこと。
高価な生の神戸牛なので、1カ所の配達でも小さな箱1つか2つなこと。
これは魅力的だった。
給料はその場で金額を伝えられる。
提示された金額はイギリスのワーホリの平均的な金額だった。
ここでも正直に、もう1社と話しているので比較させてくださいと伝え、後日こちらから連絡することになった。
そこでの面接を終えて、宿に戻ろうと駅に歩いていたら最初の会社から条件のメールが届いた。
書かれていた金額は俺が要望したシドニーでの給料よりも多いぐらいの金額だった。
2社目で提示された金額の1.5倍以上あった。
それと有給が年間20日。
ただし隔週の土曜日は半日だけど出勤する必要がある。
仕事内容は後々、郊外が週2日、ホームデリバリーが週2日、通常便が週1日ぐらいで調整したいとのことだった。
考える必要も無かった....。
金額が違いすぎる...。
正直イギリスでの給料はオーストラリアの3分の2以下になる覚悟で来た。
なのにオーストラリアより物価が高いから貯金はほぼ出来ないと思っていた。
ただこの金額なら余裕で出来る。
ただ、イギリスではそこまで働かない、生活費ぐらいでいいとも思ってもいた。
そのぶん勉強や違うことに時間を使おうと。
それに会社が郊外すぎる。
市内に遊びに行くには遠すぎる。
神戸牛の小さな箱と高級レストランへの配達も魅力的だ。
ただ...何度考えても金額が違いすぎる...。
フルタイムのがっつり仕事になるし、完全にシドニーみたいな肉体労働だけど...。
1時間も考えないで、好待遇ありがとうございます、よろしくお願いいたします、と返信した。
週明け月曜日からの出勤になった。
あまりに順調すぎる。
自分で言うのもなんだけど、到着翌日に仕事が手に入り、5日後から仕事開始、そしてこの金額は、イギリスにワーホリで来た人の中でも最高クラスなのではないかと思える。
オーストラリアでの経験があるにしてもラッキーすぎる。
翌日は朝からとにかく家探し。
宿を取ってあるのはあと3泊。
仕事が始めるまであと4日。
一刻も早く決めて楽になりたかった。
会社はとにかく北の郊外。
日系サイトを一応見るが、そんな郊外に募集は一切無い。
ローカルサイトで探すが、それも郊外すぎて募集が少ない。
しかも中々良さそうな物件が無い。
通勤エリア内で、範囲を広げて探すが、いかんせん土地勘が無さ過ぎてまったくイメージが出来ない。
どこが栄えていて、どこがアクセスがいいかとかもまったく分からない。
そもそも電車通勤がいいのか、バスがいいのかも分からない。
物件サイトと地図を交互に見続けて、会社から南に10km、Tottenham haleという駅に行き着く。
どうもこの周辺では1番目立つ街らしい。
この駅周辺なら物件もけっこう出ている。
ここなら電車と徒歩で30分で会社に行ける。
出来れば電車代も高いので会社から徒歩圏内に住みたかったが仕方ない。
ひとまずこの駅周辺の家を探す。
それで住んでみて不便だったらまた引っ越せば良い。
ひとまず今は宿から出たい、仕事が始まるまでに部屋が欲しい。
駅周辺の価格の安めなシェアハウスに6~7軒ほどメールを送る。
その後は、イギリスに着いてからやらなくてはならない保険だなんだかんだの申請と、色々な情報収集をして寝た。
翌日。
返事が返ってきたのは2軒だった。
内見に行く。
Tottenham hale駅を降りると、地下鉄は通っているものの、いかにも郊外の住宅街だった。
郊外の端らしく、駅周辺は高層マンションの建設がいくつかあった。
1軒目は、フィリピン人のおばちゃんオーナーが迎えてくれた。
住んでいるのは彼女の旦那と姉、あともう1人とのことだった。
部屋は3階の1室だった。
2軒目は1軒目の向かいにある家。
この家は、イギリス人の同い年ぐらいの人が管理していた。
ルームメイトは他に3人、みんな20~30代の人。
産まれはイギリスかは分からないけど、英語はネイティブ。
いわゆる若者のハウスシェアだった。
2軒内見が終わったあと外でしばらく考えた。
値段はほぼ一緒。
条件もほぼ一緒。
ただ、1軒目はフィリピン人のファミリーの家。
内見の説明は100%理解出来た。
2軒目はゴリゴリのイギリス人。
内見の説明は40%くらいしか理解出来なかったというか、俺の解釈が合っているかの自信も無かった。
片方はファミリー。
片方はシェアハウス。
面白そうなのはもちろんシェアハウス。
ただ英語が...。
イギリスに来てまだ4日目。
若者のシェアハウスは背伸びしすぎな気がした...。
シドニーも中国人ハウスだったし。
まだ早い...今じゃ無い...ひとまず安定が必要。
もろもろ書類を揃えるには住所がいる。
そう判断して1軒目にすることにした。
宿の予約はもう1泊残っていたし、キャンセルでの返金は出来ないと言われたが、だからといって宿にいても仕方ないので1泊分無駄にして、翌日引っ越しをした。
家賃は週£160、26000円。
シェアハウスで月10万円を超える。
シドニーが6万円ちょっとだったから、家賃だけでも全然違う。
家はフィリピン人の奥さんとそのお姉さん。
旦那さんはエクアドルだか南米の人。
国際結婚のおじいちゃんとおばあちゃん。
奥さんの妹が日本に嫁いだけど離婚したらしい。
それ以上の詳しい事は話さなかったから未だによくは知らない。
それとモロッコ人の女の人が向かいの部屋に住んでいた。
ただシドニー時代と一緒で生活時間帯も違うし、普段は全員とあまり会うことも話すことも無かった。
部屋は10畳ぐらいの3階の北側の部屋。
この部屋の最大の長所は冷蔵庫がまるまる1台部屋にあった。
普通シェアハウスだとこの1台を2~3人でシェアするから、これはだいぶありがたかった。
後々分かったことだけど、会社のマネージャーに「お前どこ住んでるの?」と聞かれ、
Tottenham hale駅なので、「トッテンハム」と答えたら、
「お前それトットナムだろ。有名なサッカーチームの本拠地だよ、知らないか?」
と言われ、トッテンハムではなくトットナムなことを知る。
そしてイングランドプレミアムリーグのトットナムなら子供の時からもちろん聞いたことがある。
家から歩いて20分ぐらいの場所にトットナム・ホットスパーズのホームスタジアムがあった。
まさかあのトットナムに住んでいるとは知らなかった。
それと、このTottenham haleは後々考えると1番ベストな場所を選んでいた。
会社まで電車と徒歩で30分。
そして市内を東から西に走る地下鉄のVictoria線も走っているので、市内中心部ならどこに行くにもだいたい30分で着ける場所だった。
同僚達も何人かここに住んでいた。
土地勘が無いなりに良い場所を選んでいた、というかここしかないみたいな場所だった。
イギリスに着いて1日で仕事を、3日で家が決まった。
順調すぎる。
この辺は経験よりも運要素が強いからマジでラッキーだったと思う。
引っ越しが一段落して、近所のスーパーに買い物に行った。
駅前にショッピングパークがあって、一通りはここで揃った。
まだ宿の近くのコンビニみたいな場所にしか行ったことがなかったので、初めてちゃんとしたスーパーに来た。
一通り見て、1番に思ったのは全ての種類が少ない気がした。
野菜も肉も、酒も冷凍食品も。
オーストラリアはアジア系の人も山ほどいたからスーパーにも色々売っていた。
それがごっそり無い感じ。
何を買って何を食べていけばいいのかイメージがしづらい。
そして当然だけど高い。
パッと見で、オーストラリアの1.5~2倍近くする。
この先色々なものを見て、安いものを学んで節約術を作っていくしか無い。
ひとまず、しばらくの食料と酒を買った。
それと仕事用の服や靴を買う。
イギリスに着いて4日目。
仕事が始める前日の日曜日。
夜、トシさんと呑みに行く。
シドニーでトシさんの送別会をしてから約7ヶ月ぶり。
あれからのシドニーとロンドンでのことを話し、イギリスのことを色々教わる。
呑みすぎて、タクシーを拾って帰る。
明けて月曜日、初出勤。
完全な二日酔いだった。
制服をもらったり、色々倉庫の中のことを教わって、契約書にサインしたりする。
初日は倉庫でピックアップや検品の仕事をして夕方終わる。
翌日から具体的に仕事を教わり始める。
車はバンが15台ちょっと。デカいトラックが10台ぐらい。
倉庫チームも30人ぐらいいる。
面接は日本人の方にしてもらったが、倉庫とドライバーに日本人はいない。
営業職の人は上の階にいるので、普段会うことはまったくない。
ルート管理とかの下の階の事務所も全員外人。
俺のマネージャーもみんな外人。
完全な超英語環境。
しかも全員ワーホリとか出稼ぎとかではなく、ほとんどイギリス生まれのネイティブ。
肌や髪の色、両親の産まれこそはみんなバラバラだけどみんなイギリス国籍。
ヨーロッパ系、アフリカ系、南米系がほとんど。
アジア系はフィリピン系とベトナム系が数人。
英語が拙いのは完全に俺だけ。
最初の数日は理解するだけでも大変だった。
同業の会社だけど、それはシドニーとはまったく違った。
会社はイギリスでシェア1位の一番デカい日本食問屋とのことだった。
自社ブランドもあって、自社ブランドは大手スーパーにも卸していた。
倉庫の大きさも車の数もシドニー時代とは違った。
毎朝、まずは請求書をもらう。
前日までに倉庫チームがお店ごとに商品をピックアップしてあるので、請求書に書いてある置いてる場所を巡って自分のパレットを作っていく。
だいたい毎朝いくつかの商品が見つからず時間をくう。
それが終わったら冷凍庫に行き、冷凍商品をピックアップする。
冷凍商品は車ごとにパレットが作られてはいるが、だいたいいくつかのお店が抜け落ちているので、それは別で探す。
シドニーでは毎日パレットが作られていてピックアップする作業は無かったから、これは違った。
出勤してから出発まで1時間ちょっと。
9時過ぎに出発する。
ただシドニーではトラックだったから毎日4パレットあった。
ただここではバンだから1~1.5パレット。
荷物の量は減った。
火曜日からは色々なドライバーについて、助手席に乗って研修になった。
一緒に毎朝パレットを作って、一緒に配達をした。
金融街のカナリーワーフからグリニッジ方面に行く便に数日乗ったり、ロンドン中心部のソーホーやメイフェアを回る便に数日乗ったりもした。
それでお店の搬入口を教わり、地図にマークしていった。
仕事ではあったけど、毎日ロンドンの色々な場所に行って色々な景色が見られるのは本当に楽しかった。
配達先もバリエーションに富んでて色々なお店が見られた。
なにより二人で配達だから楽だったし、配達が終われば、みんな倉庫までの帰り道の途中の俺の最寄り駅に降ろしてくれたから、毎日2時とかには家に帰れた。
週末、知り合った日本人の人と4人で市内に呑みに行く。
数件ハシゴして、帰る頃には深夜2時過ぎになっていた。
まだ意識も普通にあったから地下鉄で帰れるだろうと思い、地下鉄で帰った。
気づいたら寝てしまい、起きたらマジでどこだか分からない場所にいて、急いで次の駅で降りた。
ここはどこだろうと携帯を見ようとしたら、ポケットに携帯が無かった。
すられた。
鞄の中も良く探すが無かった。
携帯の他に眼鏡と買ったばかりのタバコも無かった。
記憶の中では寝てしまう前に携帯は手に持っていた気もする。
そりゃ盗られる...。
ひとまず、まだまったく土地勘の無いロンドンでここがどこなのかもまったく分からない。
路線図を見ながら、配達中に見た家から近そうな駅で降りて、タクシーで帰った。
ひとまず家からすぐに携帯のロックをかけて、意識もボーっとしていたので寝た。
翌日起きて冷静になって色々と考えた。
シドニーでは酔っ払って帰っても、怖いとか危ないとかそういう感覚は無かった。
周りからも危ない目にあったみたいな話しを聞くことも無かった。
だから感覚がバグっていた。
日本に1度帰っていたのもある。
ただここはロンドン、ヨーロッパ。
3年前にここに来たときに宿で充電器を一式盗まれたことも忘れていた。
他のヨーロッパ諸国でも盗難にあった人も山ほど会ったし、山ほど聞いた。
そういうのを完全に忘れていた。
完全に俺が悪い。
アプリで見ると、昨夜盗まれたあと、GPSはロンドン西部の公園で確認されていた。
電車に乗ってその公園に行き、GPSの場所を探してはみたが見つかるはずも無かった。
翌日からも何回かGPSはロンドン西部で確認されて、1度仕事終わりにも見に行ったが見つからなかった。
仕方が無いし、携帯は仕事で必須なので盗まれた翌日に近所の電気屋に買いに行った。
盗まれたのは去年シドニーで買ったiPhone12。まさかの12から13への乗り換え。
値段は11万5000円。
馬鹿すぎる。
お金のことよりも、最後にバックパックをとったのが帰国してすぐの隔離期間中だったこと。
4年ぶりの日本での一時帰国中の写真が全て無くなったのがマジで悲しすぎる。
マジで....。
この1年半分の、携帯に記録していた色々なデータも無くなった...。
ただこの話を2週間後、他の人に話したら、お前日本出国から3ヶ月以内だからクレジットカード付帯の海外旅行保険が適用されるのでは?と言われて初めて気づく。
自分が持っているクレジットカードを何枚か調べると1枚が対象内で、警察にオンラインで盗難届を出し、各種書類を揃え、申請したら1ヶ月後にほとんどのお金は戻ってきた。
これは本当にありがたかったけど、写真とデータが無くなったのは今でもめっちゃ悲しい...。
この頃から、仕事も家も決まったので、色々な場所に行き始める。
ミートアップやランゲージエクスチェンジに行ってみたり、色々な方法で色々な人に会い始めたりする。
ひとまず週末の予定をなるべく埋めて、平日の仕事の後でも都合がつけば、色々な人と色々な場所に行った。
働き初め初めて2週間経った週末。
初めて市内観光に行く。
ビックベン。
3年前に来たときには工事中で時計台の部分は見えなかったけど、今は下の部分まで降りていた。
ただ、いつまで工事してんだよと思う。
ロンドンアイ。
バッキンガム宮殿。
なんとなく入ったレストランで初めて外食。
美味しかったけど、£24、3700円は高い。
3年前に来たときはちょっと遠いという理由で諦めた、諜報機関MI6の本部。
007の本拠地。
映画には出てこない正面側。
テムズ川沿いを歩いて中心部に戻る。
ウエストミンスター寺院。
日曜だったから中には入れなかった。
その翌週の平日。
ドライバーには2種類いるらしく、俺みたいな会社の社員と、外部の会社に委託して呼んでいるドライバーもいるらしい。
彼らはたまに来る人もいるし、毎日来る人もいる。
その日はそんなドライバーで初めて会う人だった。
その日の配達エリアはロンドン北部で簡単な日だった。
2軒ぐらい終わったところで、車がパンクした。
修理の人が来るまで2時間かかった。
海外に来てから本当に山ほど見た光景。
その日の夜は1番の繁華街ソーホーに行く。
配達では来たことあるけど、普通に来ると全然違う。夜だし。
その日はソーホーから再びテムズ川のほうまで歩く。
この辺も夜見るのは初めてだった。
そんなことをしていた入国から2月上旬まで。
携帯こそすられたけど、順調で楽しい毎日だった。
ロンドンに来てから3週間が経った。
3週間でこれは十分すぎると思っていた。
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